レイヤーという概念

レイヤー(layer)」とは直訳すると「層、積む、重ねる、敷く」という意味。このレイヤーという概念は、おそらく元々はOSI参照モデルから来たのではないかというのが、私の推測。(間違っていたらご指摘ください)

レイヤーと言えば有名なのはDTPデザインですが、コンピューターの技術発展に伴い今では、動画編集、ウェブデザイン、建築にまでも応用されています。これがキャンプブログに何の関係があるの?という話ですが、レイヤーという概念はコンピューターの枠を超えて、美容、洋服、あらゆる物作りにまでレイヤーという概念が取り入れられています。

目次

レイヤーって何?

レイヤーとは「層、重ねる」というのが一般的に広く使われる意味になり、DTPデザインで言えばいくつかのシートを重ねて層(レイヤー)にすることで、上から見た時のその重なり具合によって、ひとつのデザインを創り上げます。その過程において、いくつかの層(レイヤー)毎に、グループ化し、作業領域を分けることで、作業効率を上げる役割もあったりします。グループ化された各層(レイヤー)は、アプリケーションなどによって即座に表示、非表示にすることもでき、また、層(レイヤー)毎に重なる時間をずらすことで、3D動画の編集、アニメーションのウェブデザインなどにも応用できます。

写真素材:http://designers-tips.com/archives/11421

昨今のデザインをはじめとするコンピューターの創作物は、もはやレイヤーなしでは語れないと言っても過言ではありません。

レイヤーの始まり

所説あるというより私個人は1977年から1984年に定義されたOSI参照モデルがレイヤーという概念の始まりだと思っています。理由はレイヤーという概念を記載した文献がそれより以前に見受けられないからで、確信を持っているわけでもなく、もし読者の方でもっと詳しい方がいればコメントいただければありがたいです。

OSI参照モデルとは?

キャンプブログから若干遠ざかりつつありますが、後半にはきちんとキャンプに役立つ内容に戻ってくるので、興味がある方だけ読んでいただけたらと思います。

今、みなさんは何事もなく当たり前のようにインターネットに繋がっていて、スマホでメールしたり、動画を見たり、友達とLINEしたりしていますが、もともとコンピューターがなかった時代に世界中の開発者が、好き勝手にインターネットを独自で開発したら、当たり前ですが互換性がなくなります。

世界中の人と瞬時に同じ時間を共有できるからインターネットというものが、これだけ世界に広まったのであって、それぞれが個々で開発し相互換性がなく、人と繋がれなかったら、意味がありません。そのインターネットつまりネットワークに関して基準というものを一番初めに示したのが、OSI参照モデルです。

2021年現在におけるインターネットの基本モデルはDARPAモデルが主流となっており、実際にOSI参照モデルは現在ではほとんど使われておりません。しかし、インターネットが初めてアメリカの軍事利用のために開発されてから、世界中の開発者たちが、独自に開発を急いでいましたが、それぞれに互換性がなかったら意味がないということで、業界統一の規格を作ろうとなり、そのモデルとして活用されたのが、OSI参照モデルになります。

OSI参照モデルにおけるレイヤーとは?

OSI参照モデルとは、パソコンAとパソコンBをインターネットを介して繋げるために、その規格(プロトコル)を階層に分けて定義したものです。階層、つまりレイヤーになります。

OSI参照モデル

レイヤー7アプリケーション層アプリケーションの選定LINE・メール・YouTube・Wordなど
レイヤー6プレゼンテーション層データフォーマットの交換SSL・TLS
レイヤー5セッション層コネクションの確立SIP
レイヤー4トランスポート層データ転送の管理TCP・UDP
レイヤー3ネットワーク層アドレスの管理や経路選択IPアドレス
レイヤー2データリンク層機器の識別MACアドレス
レイヤー1物理層物理的な接続方法電源・イーサネットケーブル

上記はOSI参照モデルのレイヤーを示したものです。レイヤー7の一番右側の項目は分かりやすいようにあえて、皆さんに馴染みのあるアプリケーションの名前にしています。

パソコンAパソコンB
レイヤー7LINEアプリLINEアプリレイヤー7
レイヤー6レイヤー6
レイヤー5レイヤー5
レイヤー4レイヤー4
レイヤー3レイヤー3
レイヤー2レイヤー2
レイヤー1→ インターネット →レイヤー1

LINEアプリを例に上記の図を作りましたが、LINEで友達にメッセージを送ったら、今では一瞬で「ピロン♪」と音が鳴って相手方に届きます。これは上位レイヤーから各パソコン(スマホ)の中に分類される下位レイヤーを通していき、インターネットを介して、また相手側のパソコン(スマホ)の下位レイヤーから上位レイヤーにというように、上記のような矢印の流れで、相手に届いているのです。

文献に明確に記載された初めてのレイヤー構造

OSI参照モデルは元々、それぞれの国や企業が独自に開発した規格(プロトコル)が乱立していたことに危惧したことから、出来上がった業界標準の統一規格になります。その際に、考えられたのがレイヤーという概念になり、OSI参照モデルでは7段階のレイヤー構造、前述した現在のインターネットの主流のDARPAモデルやTCP/IPプロトコルは4段階のレイヤー構造となっています。

レイヤーの役割

OSI参照モデルを見れば分かる通り、レイヤーという概念がなければ開発者は、どこからどこまで開発をすればいいかわかりません。各レイヤー毎に規格(プロトコル)が異なっており、逆に同じレイヤーではある程度、規格(プロトコル)が絞られています。それにより開発者は、各レイヤー毎の最適な規格(プロトコル)を選び、その階層、つまりレイヤーだけの開発に集中できるということです。

そして各レイヤーをつなぎ合わせることで、通信、つまりインターネットでのやり取りを可能にする。昔は使者を送り込み、何日もかけて海外の相手国に書状を渡していたのが、インターネットの復旧によって、一瞬にしてリアルタイムで世界との通信が可能になったのです。その大きな役割を果たしたのが、レイヤーという概念になります。

レイヤーが一般的になったきっかけ

レイヤーが一般的に知られるようになったのは間違いなく、DTPデザインでの活用です。

イラストレーターやフォトショップなどを使ったチラシやフライヤーの作成では、背景の色、商品の写真、文字、価格などを重ねて表示させます。スーパーなどのチラシを思い浮かべると、分かりやすいかと思います。レイヤーにより作業効率を上げ、レイヤーによりデザインを何種類も見比べられ、レイヤーにより2Dデザインが3Dデザインのように立体的に見える。いつしか、レイヤーという技術は、DTPデザインにとって欠かせない存在となったからです。

レイヤーの応用例

一般的にデザイナーや、建築系のCADデザイン、ウェブデザイン、動画編集などをする方以外、レイヤーという概念を知らない方がほとんどかもしれません。しかし、レイヤーという概念や技術は、多くの日本国民の生活の中に、そこら中に取り入れられています。

ロゴのデザイン

例えばこのロゴです。

Apple inc.

iPhoneやiPod、MACなどで今は世界企業となったアップルのロゴですが、このロゴにもレイヤー技術が使われています。

画像素材:https://co-jin.net/design/logo-design-gridsystem

このロゴにはモナ・リザやパリの凱旋門などで使用されている古代ギリシアの黄金比(神の比)と言われる長方形と円が、いくつも重なり、アップルという企業名のリンゴを表現しています。DTPなどで使われるデザインとは、また違ったレイヤー技術の応用になります。

黄金比については、もしキャンプに少しは関係するような商品をみつけたら、また改めて書くとして、人間が見て美しいと言われる黄金比を、いくつものレイヤーで重ねて、リンゴを表現していることに、デザインを重視したAppleという企業の戦略、そして、圧倒的なブランディング能力を感じます。

建築への応用「CAD」

建築の設計に使われるCADソフトウェア。設計するにあたり、柱、梁、外壁、内壁、家具や照明などをレイヤー毎に分けます。責任の所在や進行状況などをレイヤー毎に管理することで、全体のタイムラインがスムーズに進行できるようになります。また修繕や改修などを行う時もレイヤー毎に、方向性を決めることで、全体のバランスなどが見えやすくなります。

美容への応用「レイヤーカット」

美容師の方なら必ず知っているレイヤーカット。毛先に段差をつけてカットしていくことをレイヤーカットと言うそうですが、そこにさらに応用を加えて、レイヤーボブやレイヤーウルフなど、次々と新しいヘアデザインが生まれていきます。ヘアデザインを正面から見ると2Dですが、そこにレイヤーの層を作り、段差を付けることで立体的なデザインが出来上がっていきます。2Dから3Dへ見せるという意味で、層を重ねていくというのはレイヤー技術の応用と言えると思います。

洋服への応用「レイヤード」

積み重ねるという意味の「レイヤード」。ファッション業界でよく使われる言葉で、日本語にすると重ね着になります。重ね着といえば、1990年代後半の日本でもブームになり、そのまた20年ほど前、ベルボトムをはじめとしたヒッピーファッションの流行の際も、重ね着という概念は多く存在しました。もしかしたら、ファッションのレイヤード、つまり重ね着が、レイヤーという概念の始まりかもしれません。

キャンプにおけるレイヤー

ようやくキャンプブログらしく、キャンプに辿り着きました。少し長かったですね。タダで聞ける大学の講習と思っていただけたらと思います。

文頭、OSI参照モデルというネットワークの理論から、レイヤーの概念の話をして、チラシやロゴ、建築に美容、洋服と、レイヤーというものを説明してきたのですが、なぜ、キャンプブログでレイヤーの概念の話を初めにしたかというと、キャンプにレイヤーの概念は非常に多く使われているからです。

テントのレイヤー

テント探しを始めるにあたって、いろいろと調べていく中で、スノーピークのランドロックを例に出すと、メインテント、インナーテント、インナーマット、グランドシート、シールドルーフなど聞きなれない言葉が出てきます。このシートの敷き方(重ね方)を間違えるともちろんですが、意味がありません。急な雨でテントがびしょ濡れということもあります。一般的に、テントの敷き方をレイヤーとは呼びませんが、レイヤーで説明すると分かりやすくなります。

ちなみに、ランドロックの正しいレイヤーの並びは、こうなります。

レイヤー5シールドルーフ
レイヤー4メインテント
レイヤー3インナーマット
レイヤー2インナーテント
レイヤー1グランドシート
レイヤー0地面(芝生)

ド素人の初心者ならレイヤー1がおそらく一番間違えると思います。私も最初はインナーテントの上にグランドシートを置くと思っていましたが、よく調べてみるとインナーテントを雨から守るためのものなので、一番下位のレイヤーがグランドシートになります。そもそも多くのインナーテントが雨に弱いということ自体、知りませんでした。もし、ここにタープを入れるなら、レイヤー6になりますかね。

どうでしょう。レイヤーで説明すると文章で説明するよりはもちろんのこと、表で説明されるよりも分かりやすくなると思います。図などを描ければ別ですが、図面などを書く暇がなければ、レイヤーで説明する方が間違えにくいと思います。

山登りの服装の基本「レイヤリング」

ファミリーキャンプであれば、キャンプ場などを借りてすることが多いと思いますが、もう少し過酷なアウトドアと言えば、山登り。天候や気温が目まぐるしく変わる山に対応するため、その時の服装というのは非常に大事になってきます。

そこで大事なのが、レイヤリングになります。基本的には3層の構造となっており、以下のようになります。

レイヤー3アウターレイヤー
レイヤー2ミドルレイヤー
レイヤー1ベースレイヤー
レイヤー0身体

ベースレイヤーは、一般的なインナーであり、汗を素早く吸収し汗冷えを抑え、保温をする機能が求められます。最近では肌に直接触れるということで、ベースレイヤーは化繊のものより、天然素材のメリノウールの流れになっています。

ミドルレイヤーは、その名の通りベースレイヤーの上に着るウェアで、保温性を確保しながら、内部の空気をドライに保つための通気性も求められます。

アウターレイヤーは、一番外側にくる一般的なジャケットになり、雨、風、雪などから身体を守る役割になります。雨の日に強い撥水効果が優れたレインウェアや、動きやすさや軽さを重視したもの、どんな過酷な状況でも破れないものや、ゴアテックスの素材を利用した高価なものまで幅広くあります。

レイヤリングについては、またキャンプウェアのカテゴリーにて記事を少しづつアップしてきたいと思います。

レイヤーの派生「スタッキング」

山登りやソロキャンプでは限られた容量のバックに必要なものを詰め込まなければいけないため、限られた容量のスペース(空間)を確保することも重要になってきます。しかし、例えば調理器具などを少なくして、空間を確保すれば軽くなり、他の荷物も入れれますが、その分不便になります。そのため、複数の食器や、燃料、ストーブ器具などを小さくまとめて、一つの食器の中に積み重ねたりすることでコンパクトに収納します。これを「スタッキング」と言います。

冒頭で説明したような重ね方であるスタッキングは、一種のレイヤーの派生とも言えます。

ダッチオーブンのレイヤー

ダッチオーブンは上述したスタッキングに対応したような商品が多数販売されています。持ち運びや収納を考えて商品化されているということもありますが、ダッチオーブンの場合、調理中にもレイヤー技術を使った料理が楽しめます。

レイヤー3ダッチオーブン Sサイズ
レイヤー2ダッチオーブン Mサイズ
レイヤー1ダッチオーブン Lサイズ
レイヤー0

ダッチオーブンは、下から焚火、そして上から炭など、熱を全体から与えて調理できる器具になります。そのダッチオーブンをレイヤー化することで、小さいダッチオーブンを上に重ねていき、レイヤー1のダッチオーブンLサイズでメインディッシュを、レイヤー2のダッチオーブンMサイズでスープを、レイヤー3のダッチオーブンSサイズでお米を炊く。そんなことが一つの熱源で可能になります。

運ぶときはスタッキングができ、料理をするときはレイヤー化できる。ダッチオーブンこそ、レイヤーという概念の究極進化系だと個人的に思います。

まとめ

レイヤーという概念について詳しく解説してきました。おそらくGoogle先生をどれだけ検索しようと、個別のレイヤーのあり方や考え方、やり方についての記事はあれど、レイヤーそのものの概念について、ここまで詳しく説明しているブログはないと思います。

それもこのブログがキャンプブログだと言うことがまた個人的には面白いんじゃないかなと思っています。巷で有名なキャンパーの方々のブログも色々と拝見させていただいておりますが、私が綴るキャンプブログは、また一味違った目線からも様々な情報を提供していきたいと思いますので、今後とも当ブログをよろしくお願い申し上げます。

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